こんにちは。
現代の日本において、核家族化や地域社会とのつながりが薄れる中で、多くの母親が孤立しがちな子育て環境に置かれています。育児に関するストレスや不安、育児が難しいと感じる状況が増え、母親たちは育児に対して自信を失いやすくなっているのが現状です。これにより、母親のストレスが増大し、育児に対する否定的な感情が生まれやすくなることが報告されています。厚生労働省も、育児不安や孤立化が深刻な問題であると認識しており、早期の支援が求められています。
この記事では、足利大学の島田葉子氏らが行った「育児ストレスや育児不安、育児困難を抱える母親への育児支援の実際とその効果についての文献レビュー」に基づき、さまざまな支援の実施方法とその効果について考察していきます。研究の内容をもとに、母親が抱える育児ストレスや育児不安を軽減し、支援の効果を高める方法を探っていきましょう。
•これらの支援を全国的に普及させ、母親が利用しやすい環境整備が課題。
•育児は一人で抱え込むものではなく、社会全体で母親を支える必要がある。
1.訪問型支援
産後間もない母親に対して訪問型の支援が行われるケースが多く、母親が家から出ることなく支援を受けられるため、訪問による育児支援は母親にとって重要なサポート手段の一つです。研究によれば、訪問型の支援を受けた母親たちは「安心感」や「子育てに対する肯定的な気持ち」を持ちやすくなったという結果が示されています。
訪問型支援は、特に孤立しがちな産後直後の母親に効果的です。子育てに対する戸惑いや孤独感が減少し、育児への自信が高まることが確認されています。また、訪問を通じて母親が「誰かに相談できる」「理解される」という実感を得ることが、育児不安の軽減につながると考えられています。このように、産後間もない時期に専門の支援員が母親のもとを訪れることで、母親が孤独感や不安から解放され、育児にポジティブな感情を持ちやすくなる効果が期待できます。
•母親の不安を軽減し、育児に対する自信を高める効果がある。
•特に産後早期は母親が社会から孤立しがちなため、外部からの支援が重要。
2. 養育スキル習得の支援
母親が自分の育児方法に自信を持てず、ストレスを感じる原因の一つは、育児に関するスキルが不足していると感じることです。そこで、母親が育児に必要なスキルを習得するための支援が重要視されています。研究では、養育スキルを学ぶことで母親の育児に対する肯定的な感情が増し、育児ストレスや不安が軽減されたと報告されています。しかし、この支援の課題としては、学ぶ機会が限られていることが挙げられます。
たとえば、育児において重要な「褒めること」「行動を見守ること」「適切に制止すること」といった具体的な対応方法を、ワークショップや教育プログラムを通じて母親に学んでもらうことで、育児不安や育児困難が軽減されることが分かっています。母親が育児に関する知識やスキルを身につけると、育児に対する主体性が高まり、ストレスも減少します。このような支援は、特に初めての育児に対する不安を抱える母親にとって有効です。
•母親が育児基本を理解することで、育児への不安を軽減し自信を育む。
•実践的なスキルが習得できることで、母親のストレスが軽減される。
3. 児との触れ合い方の支援
児と触れ合う方法を学ぶことも、母親にとっては重要な支援の一つです。研究によると、ベビーマッサージなどを通じて母親が児と触れ合う方法を学ぶことで、母親の対児感情や育児効力感が高まります。これにより、育児ストレスが軽減され、母親自身が育児に自信を持つようになる効果が期待されています。
ベビーマッサージは、母親が児とのコミュニケーションを増やす方法として有効で、母親の自己肯定感を高め、児に対する愛着形成にも良い影響を与えることが確認されています。このような「触れ合い」を通じた育児支援は、母親が育児に喜びを感じやすくする効果があり、ストレスや不安を和らげるのに役立ちます。母親が児と一緒にいる時間を積極的に楽しめるようにサポートすることが、この支援の目的です。
•児との触れ合いが促されると、母親が育児に対する愛着を持ちやすくなる。
•育児におけるポジティブな経験が増え、ストレスが和らぐ。
4. 母親同士のピアサポート
母親同士の交流を促進する「ピアサポート」も、育児支援として効果が期待されています。研究によれば、母親同士が体験を共有し、お互いの悩みや成功体験を話し合うことで、育児不安の軽減や自己効力感の向上が得られます。ピアサポートは「自分だけではない」という安心感や「他の人の役に立っている」という自己肯定感を育むため、母親にとって大きな支えとなります。
母親たちは、共通の体験を持つ仲間と話すことで、自分の悩みを軽減し、他者のサポートを受けながら育児を進めていく力を養うことができます。また、ピアサポートを受けることで「自分も誰かの役に立っている」と実感し、自己肯定感が高まるため、育児ストレスが軽減するというメリットもあります。
•同じ立場の母親とのつながりが、心理的な安定感をもたらす。
•共感し合える関係がストレス軽減に寄与し、育児へのモチベーションを向上させる。
5. リフレッシュ支援
母親がリフレッシュできる機会を提供する支援もまた、育児ストレスの軽減に有効です。母親の育児に対する肯定感が高まることで、育児に前向きに取り組むことができるようになります。この支援の効果は、夫の育児協力があるかどうか、あるいは家庭のサポート体制が整っているかによっても異なります。
リフレッシュ支援には、趣味や息抜きの時間を設ける支援や、育児から一時的に解放される機会の提供などがあります。母親が自分の時間を確保することでストレスが軽減され、リフレッシュされた気持ちで育児に向き合うことができるようになります。この支援は、育児疲れを感じやすい母親にとって特に重要です。
•リフレッシュにより、母親が育児を新鮮な気持ちで続けられるようになる。
•メンタルヘルスの維持に貢献し、育児負担感を軽減する。
6. 育児支援プログラムの開発
最後に、育児支援プログラムの開発も効果的な支援方法です。このプログラムは、妊娠期から育児期にかけて母親が一貫した支援を受けられるよう設計されています。研究では、似たような育児経験や悩みを抱える母親同士をグループ化し、共に学ぶことでストレス軽減や育児不安の解消につながることが分かっています。
支援プログラムには、母親同士が交流し、育児に関するスキルや知識を学び合うためのグループ活動が含まれます。このようなプログラムは、特に妊娠期から開始することで、母親が出産後の育児に備える自信を持つ効果も期待されます。
•包括的なアプローチが、母親のニーズに合わせた柔軟なサポートを可能に。
•継続的な支援が、母親の育児ストレス軽減とメンタルヘルス向上に寄与。
終わりに
母親が育児に伴うストレスや不安を抱えず、安心して子育てができる社会を築くためには、多様な育児支援の提供が重要です。今回の文献レビューからわかるように、訪問型支援や育児スキルの習得支援、児との触れ合いを促す支援、母親同士のピアサポート、リフレッシュ支援など、それぞれのアプローチが異なる場面で有効に機能し、母親のメンタルヘルスや育児に対する前向きな意識を向上させます。
特に、産後すぐの時期には訪問型の支援が母親の孤立を防ぎ、養育スキルや児との触れ合い方の支援が育児に対する自信を高めます。また、ピアサポートやリフレッシュの機会は、日常のストレスを和らげる役割を担い、母親が健全な気持ちで育児に取り組む手助けとなります。育児支援プログラムのように、包括的なアプローチで支援を継続して提供することも、多くの母親にとって心強い支えとなるでしょう。
今後の課題としては、これらの支援をどのように全国的に普及させ、より多くの母親が気軽に利用できる環境を整備するかが挙げられます。育児支援の提供者も、母親が抱える課題や悩みに耳を傾け、ニーズに合ったサービスを柔軟に展開することが求められます。育児は決して一人で抱え込むものではありません。母親が社会から支援を受け、安心して育児ができる環境を共に作り上げていくことが、私たちの目指すべき未来といえるでしょう。
参考文献↓
https://ashitech.repo.nii.ac.jp/record/125/files/
ではまた。